田畑でんぱた)” の例文
永年ながねんの繁盛ゆえ、かいなき茶店ちゃみせながらも利得は積んで山林田畑でんぱたの幾町歩は内々できていそうに思わるれど、ここの主人あるじに一つの癖あり
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
車「わしだって元は百姓でがんすから、こいくさいのは知って居りやんすが、此処こゝは沼ばかりで田畑でんぱたはねえから肥のにおいはねえのだが、ひどく臭う」
宇津木の家は代々の千人同心で、山林田畑でんぱたの産も相当あって、その上に、川を隔てて沢井の道場とならび立つほどの剣術の道場を開いております。
呼寄よびよせ父樣とゝさま死なれし以來種々不幸が打續うちつゞきかく貧窮ひんきうとなりしこと如何にも殘念なれば其方何卒なにとぞ辛抱しんばうして田畑でんぱたも元の如くに取もどし河口九郎右衞門が名跡みやうせき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
実に惨憺たる状態ありさまを呈した事があった。春から夏にかけての長い間に一滴の雨すら降らず、毎日毎日の日照り続きで田畑でんぱたの作物は皆枯死してしまう有様であった。
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
孟子の所謂いわゆる恒産無き者は恒心無しとでもうものか、多少でも財産や田畑でんぱたのある者は左程さほどでもないようだが、その他の奴等に至っては、どれもこれも、汗水流して少しばかりの金を儲けるよりは
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
数多い雇人やといにんをタタキ放し同様にして追出してしまい、有る限りの田畑でんぱたをソレゾレ有利な条件で小作に附け、納まりの悪い小作人の所有の田畑は容赦なく法律にかけて、自分の名前に書換えて行った。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
田畑でんぱたでもあるか」
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
叔父の家はその土地の豪家で、山林田畑でんぱたをたくさん持って、家に使う男女なんにょも常に七八人いたのである。僕は僕の少年こどもの時代をいなかで過ごさしてくれた父母の好意を感謝せざるを得ない。
少年の悲哀 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
さて此の医者の知己ちかづきで、根津ねづ清水谷しみずだに田畑でんぱたや貸長屋を持ち、そのあがりで生計くらしを立てゝいる浪人の、萩原新三郎はぎわらしんざぶろうと申します者が有りまして、うまれつき美男びなんで、年は二十一歳なれどもまだ妻をもめとらず