生色せいしょく)” の例文
その間に、彷徨さまよう市民たちは、たった一晩のうちに、生色せいしょくうしない、どれを見ても、まるで墓石はかいしの下から出て来たような顔色をしていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれど、まだうぐいすとしんじきれず、にとってると、草色くさいろをしたはねは、すでに生色せいしょくがなく、からだはこわばっているが、うぐいすにちがいなかったのです。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、さすがの藤井紋太夫も、悲痛な覚悟をきめたらしく、式台しきだいに列座して、当主綱条つなえだ以下家臣一統とともに、老公の駕籠を見送るときは、その眉宇びう生色せいしょくもなかった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏が暑くなければそれこそ大変! 米も出来ず、果実も実らず、万事ことごと生色せいしょくを失う事となる。夏の暑いのがそれほど嫌な奴は、勝手に海中へでも飛込んで死ぬがよい。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
敵の様子が変ったのは自分が昨夜此れ/\のことをしたからだと名告なのって出れば、味方はにわかに生色せいしょくを取り返し、無駄な心配から救われる訳でもあり、第一法師丸自身がいかに面目をほどこすことか
ここにおいて、このマタ・アリの生涯を語ることは、今日の太陽のごとき生色せいしょくを帯び、現代そのもののような複雑性を暗示し、しかも、アラビアン・ナイトを思わせる絢爛けんらんたる回想であらねばならぬ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
パイ軍曹のかおにも、生色せいしょくが、よみがえってきた。地底戦車は、ふたたび、轟々と音をたてて、前進をはじめた。
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
所詮しょせん、この程度どころでない大悲報が諏訪すわへはいって来た。このときの混乱と騒擾そうじょうと、武田方の生色せいしょくを奪ったおどろかたというものは、けだし信玄以来の甲州人としては覚えがない程なものであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらにそそぐ王軍の新兵器に、泊兵はくへいも野に生色せいしょくを失う事
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
室内の一同の顔には生色せいしょくがなかった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
洛陽らくよう生色せいしょくかえ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)