生兵法なまびょうほう)” の例文
世に推事おしごとというは出来ぬもので、これがな、腹に底があってした事じゃと、うむとこらえるでござりましょうが、好事ものずき半分の生兵法なまびょうほうえらく汗をきました。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生兵法なまびょうほうということわざを知っているか。将来のため忠言しておくが、世間をそう甘く見すぎると、出世はせんぜ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ず追々腕も出来て来たか、生兵法なまびょうほうは敗れを取ると云うたとえも有るから、ひょっと途中で水司又市に出遇であっても一人で敵と名告なのって斬掛ける事は決して成らぬ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
戦争の要領を覚えたツモリでも、新手を打つのを天才といって、生兵法なまびょうほう大怪我おおけがの元という通りだ。習い覚えた要領も、次の戦争のドサクサには役に立ちそうもないらしいや。
武者ぶるい論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
嫁か娘か二十三、四の美人がいて、薙刀なぎなたと鎖鎌を使う。飛入りは非番巡査や近所の若者、または他の道場の生兵法なまびょうほう連中、三番抜きに手拭一本の褒美を無二の光栄として汗だくの奮闘。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
町人どもが生兵法なまびょうほうにわれを生け捕るなどと企てると、思わぬ不覚をとるぞよと暗に戒めたものらしく、その用意周到なる点がどう考えても貧しい職人風情の知恵ばかりとは思われず
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「言わないことじゃない、生兵法なまびょうほう大怪我のもと——道楽もいいかげんにせんと……」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは、生兵法なまびょうほう中の生兵法の手合、その中の瘋癲者ふうてんものが、師匠に煽られて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
生兵法なまびょうほう。まさに汝のためにあることばだ。今は何をかいおう。——馬謖よ。おまえの遺族は死後も孔明がつつがなく養ってとらせるであろう。……汝は。汝は。……死刑に処す」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真偽しんぎのほどは分らないが、生兵法なまびょうほうの秀忠が、夜ごと、城外へ出て、黒衣覆面し、無辜むこの往来人を辻斬して、ひそかに楽しむというのを聞き、忠明が、わざと彼の徘徊はいかいする濠端に夜行し
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おいわけえの、取るにも足らぬ生兵法なまびょうほう細腕立ほそうでたては止めちゃあどうだ。ってじたばたほこりを立てると、大人気ないが、深見重左が王義明致流の極妙で、うぬの五体を立竦みにしびれ殺してくれるぞよ——
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生兵法なまびょうほうと生意気、ふたつを具備した市松、下手へたを踏まねばよいが)
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生兵法なまびょうほうさまたげていたのだ。もいちど、七歳の初歩にかえろう。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)