炸裂さくれつ)” の例文
幕舎の附近で、一弾の砲火が、轟然ごうぜん炸裂さくれつした。バッと黒い土砂を持った爆風があたりをつつみ、二弾三弾とまたもつづいて落ちてくる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼等は、こちらの陣地を認めて、小銃を乱射し、手榴弾しゅりゅうだんを投げつけた。小銃はとどいたが、手榴弾は、ずっと遠方で炸裂さくれつした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ砲弾だけが正確に炸裂さくれつし人員を殺傷さっしょうした。部隊はたちまちにして大混乱を起した。花田軍医中尉はその中にいた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
空一面に炸裂さくれつする敵味方の砲火、何千という軍人が、見物の目の前で悽惨せいさんな戦いをつづけているのです。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
敵の砲弾は、わがマストに命中し、たちまち帆がめらめら燃え上った。さらに一弾は船腹に命中し、鈍い音をたてて炸裂さくれつし、ぐらりと船は傾いて、もはや窮した。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
やがて米軍が上陸し四辺に重砲弾の炸裂さくれつするさなかにその防空壕に息をひそめている私自身を想像して、私はその運命を甘受し待ち構える気持になっていたのである。
堕落論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
と女は笑ったが、ヴァルパライソの雷がテリブルなのか、その時バリバリと、頭上で炸裂さくれつした野尻湖の雷に、テリブルと顔をしかめたのか、そこのところは定かでない。
雷嫌いの話 (新字新仮名) / 橘外男(著)
高射砲の炸裂さくれつする音が遠くで聞えた、丘にくり抜かれている横穴のごうへ人々は這入って行った。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
一日のうちなん度も、仕事を投げだして防空ごうの中へとびこまなければならない、すさまじい落下音を聞き、炸裂さくれつする爆弾の震動に身を揺すられ、戦闘機の掃射弾を浴びた。
四年間 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と、たいらに呼びかけた左膳の濁声だみごえには、いつ炸裂さくれつするか知れない危険なものが沈んでいた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
きっと犯人の古典クラシック好みから、ロドマンの円弾まるだま海盤車ひとでのような白煙を上げて炸裂さくれつするだろうよ
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
パリーのアパアトメントの客間で、一人の美女が男の友達の上にかがみ込んで強い接吻を押している。その接吻から西部戦線では、鋼鉄の怪物に特製の弾丸が炸裂さくれつしているのだ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
炸裂さくれつしたのちの黒い半分ずつの椀殻が水にぽかりぽかりと漂っている。おしどりのようだ。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
死骸を少し動かして、襟のあたりをはだけて見ると、左の背——丁度肩胛骨の下のあたりに、小さく肉の炸裂さくれつしてゐるのは、こゝから心の臟まで、一とゑぐりにした刄物の跡でせう。
「なにしろ、砲弾ほうだん炸裂さくれつすると、たちまちまえが、うみとなりますからね。」
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつ炸裂さくれつするかわからない、血みどろで兇悪な手あたりしだいのものを破壊し殺戮さつりくしたい願望、そんな危険を内包したダイナマイトみたいに、私は彼らの中にいて、しかも彼らから離れている。
愛のごとく (新字新仮名) / 山川方夫(著)
そういう意味において、数の子も口中に魚卵の弾丸のように炸裂さくれつする交響楽によって、数の子の真味を発揮しているのである。それゆえ、歯のわるい人には、これほどつまらないものはないだろう。
数の子は音を食うもの (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
丘を震わして飛んで行った味方の決死隊の第一勇士は中空に於いて炸裂さくれつしました。どんな効果が現われたか、果して怪物は退散させられたかと両手で耳を塞いだ儘、私達は恐る恐る空を覗きました。
母と娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
張作霖暗殺事件に呼応するように、奉天の日本人街でも当時、ひんぴんと爆弾の炸裂さくれつや投下があったが、いずれも便衣隊の仕業とされていた。しかし中国側は明らかに日本の挑発的策動と見ていた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
突如とつじょ鉛色なまりいろ地平ちへいにぶ音響おんきやう炸裂さくれつする
榴弾が城壁で炸裂さくれつしていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
高射砲から、撃ちだした砲弾が、美しく、空中で、炸裂さくれつした。そして、その照準は、見る見る正確になり、アクロン号の附近に、集まって来た。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雷火らいか炸裂さくれつは、詭計きけいでもなんでもない。怪人かいじん呂宋兵衛るそんべえが、ふところにめておいた一かい強薬ごうやくを、祭壇さいだんに燃えのこっていたろうそくへ投げつけたのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
炸裂さくれつの破片は、花田中尉の当番兵を即死させ、余勢をかって花田中尉の脚を傷つけたのだ。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
どかんという音がし、閃光せんこうがはしった。ついでまたどかんと来、さらに二度、大きく続けさまに轟音ごうおん炸裂さくれつし、谷ぜんたいが崩壊するかと思うほど、すさまじく大地が震動した。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
死骸を少し動かして、えりのあたりをはだけて見ると、左の背——ちょうど肩胛骨けんこうこつの下のあたりに、小さく肉の炸裂さくれつしているのは、ここからしんぞうまで、ひとえぐりにした刃物のあとでしょう。
長い長い年月が流れたかとおもったのに。街の鈴懸すずかけは夏らしく輝き、人の装いはいじらしくなっていた。ある日、突然、わたしの歩いている街角でパチンと音と光が炸裂さくれつした。雷鳴なのだ。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そして、最後に二十六番目の死体が——それも麻布にくるまれ、重錘おもりと経緯度板をつけたままの姿であるが——ドンブリと投げ込まれたとき、火気を呼んだ火縄函みちびばこが、まるで花火のような炸裂さくれつをした。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「うん、沈没なんかしやせんよ。さっきの爆弾は、左舷さげんの横、五、六メートルの海中で炸裂さくれつしたんだそうだ、それだけはなれていりゃ、大丈夫だ」
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
狭間はざまの壁に、太い柱に。なお、屋根のしゃちひさしの瓦などが吹飛んでいるのは砲弾の炸裂さくれつによるものであろう。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兩岸には涼みの棧敷さじきつらね、歌と酒と、男と女と、歡呼と鳴物との渦卷く頭上に、江戸中の船宿茶店その他盛り場の寄進による大花火が、夜半近くまでも、ひつきりなしにうるしの夜空に炸裂さくれつして
天空高く、一千メートルとおぼしき高度のところに、ピカピカピカピカと、砲弾が炸裂さくれつして、まるで花火のようだ。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どこかで、烈しい弓鳴ゆなりのするように、空気が鳴って、轟然ごうぜんと、十間ほど先の大地に、大砲の弾が炸裂さくれつした。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凄まじい恐怖きようふが、花火のやうに炸裂さくれつしたのも無理はありません。部屋の中に若い娘が一人、首に強靱きやうじん麻繩あさなはを卷かれ、その繩尻を二間ばかり疊から縁側に引いて、俯向うつむきになつたまゝ死んでゐたのです。
しかし驚異軍艦は、かすかにマストをゆるがしているだけで、穴一つ明かないばかりか、砲弾の炸裂さくれつした様子もない。
羽二重はぶたえをこするような空気の音が耳をかすった。途端に、積んである畳が半分、粉々になって、人間の脳味噌のうみそと一緒に、後ろのがけへ、どかあん! と炸裂さくれつした。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凄まじい恐怖が、花火のように炸裂さくれつしたのも無理はありません。
どんでんがえしで何十枚という鉄扉てっぴが穴をふさいだため、かの時限爆弾が炸裂さくれつしたときには、博士は何十枚という鉄扉の蔭にあって安全この上なしであったというのです
筒の中の火薬かやく破裂はれつして、ドーン! とすさまじい火とはい炸裂さくれつした物体ぶったい破片はへんいあげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高射砲弾は、さかんに頭上で炸裂さくれつしていた。照空灯しょうくうとうと照明弾とが、空中でみ合っていた。その中に、真白な無数のきのこがふわりふわりと浮いていた。落下傘部隊らっかさんぶたいであった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
花火が空に炸裂さくれつする、遠くの音楽隊の吹奏すいそうがながれてくる。観衆はグラウンドにつめ込んだ。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、ひっきりなしに、米軍が投げおとす爆弾の、炸裂さくれつする響だった。そのたびごとに
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なにが炸裂さくれつするのか、爆煙の噴きあがるたび、花火のような焔が宙天へ走った。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その残りの爆弾の炸裂さくれつにあって、艇はこなみじんとなってしまわなければならぬ。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その五ツの星が個々にばらばらと炸裂さくれつすると、あざやかな光傘をサッと重ねて、かむり鏡台きょうだい姥捨うばすての山々を真っ青に浮かせて見せたかと思うと、その一つの星の色が、臙脂えんじから出た人魂のように
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ものすごい原子弾炸裂さくれつの音響があとからあとへとつづく。そして原子弾をはこぶ無人ロケットていの音がまじって聞える。また地上からは、死にいく人々のかなしいうめき声がまいあがる。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と見るまに、ああ、そもなんの詭計きけいぞ、足もとから轟然ごうぜんたる怪火の炸裂さくれつ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、とつぜん彼等の頭上に、青い花火のようなものが、ぱんぱんと炸裂さくれつした。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大音響をあげて、砲弾は炸裂さくれつしたが、これもまた鉄水母の上をとびこえた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
気がついたときには、爆弾が、しきりに落ちて炸裂さくれつしていた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)