灰白はいじろ)” の例文
と、この部屋は暗黒となり、巨大な御幣ごへいのような姥の姿が、ぽっと灰白はいじろくその闇を分けて、戸口の方へ歩くのが見え、その扉のひらく音が聞こえた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ただ一条の灰白はいじろみちがぼんやりと見えて、提灯の光は彼の二つの脚をてらし、左右の膝が前になりあとになりして行く。ときどき多くのいぬったが吠えついて来るものもない。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
そのの菊を枝炭えだずみごと灰白はいじろませ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あの場所の景色とちがうところは、あそこでは、塚と林との彼方むこうが、広々と展開ひらけた野原だったのに、ここでは、土塀が、灰白はいじろく横に延びているだけであった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
黒く大きく立っている離座敷はなれ、——壁と襖とは灰白はいじろかったが、その襖の開いている左門の部屋は、洞窟ほらの口のように黒く、そこに釣ってある紙帳は、これまた灰白く、寝棺のように見え
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)