機会きっかけ)” の例文
旧字:機會
そこで、先刻さっき、君と飲倒れたまま遠島申附かった訳だ。——空鉄砲からでっぽう機会きっかけもなしに、五斗兵衛むっくと起きて、思入おもいいれがあったがね。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それ以上いもしなかったが、庸三はそれを機会きっかけに、逗子事件のその後の進展について知りたいような好奇心もいくらかそそられた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
随分書きにくかろうと墨汁ぼくじゅうふくませて見たのが機会きっかけになって、僕は間もなくこの猫柳で厄介な書信を認める運命に陥った。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と川口が罵ったのが機会きっかけとなり、二人は口論を始め、遂いに恐しい格闘になりました。吉川は短刀をぬいて向って来たが、力の強い柔道四段の彼には迚も敵いません。
青い風呂敷包 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
妙な機会きっかけで暗がりの乙松と知合いになり、その時あれから教えてもらったのさ——乙松が京へ行ったのもその時のことで、今では職人の五六人も使って立派に暮しているそうだ。
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それを機会きっかけに、美濃守をとっちめてやろうと、いくぶん今日をたのしみにしていた。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
次の皿には、焼豚がさも美味うまそうにほやほや煙を立てているが、モッフは、それをけるべくフォークを構え、ナイフをその肉にずぶりと突き刺したのを機会きっかけに、肝腎の話を切りだした。
と笑うて、技師はこれを機会きっかけに、殷鑑いんかん遠からず、と少しくすくんで、浮足の靴ポカポカ、ばらばらと乱れた露店の暗い方を。……
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これはこれを機会きっかけに矯正の第一着手を試みるのが良人としての責務だと感じると、清之介君は胸がドキ/\して来た。しかし黙ってはいられない。癖になる。小言をいうのではない。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それがお高に、さがしていた機会きっかけをあたえた。お高は、いい出していた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
台所働きの子が好い機会きっかけを見つけて言った。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
寝てるとね、盗んで来たここに在る奴等が、自分がられた時の様子を、その道筋から、機会きっかけから、各々めいめいに話をするようで、たのしみッたらないんだぜ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕達もいつまでも油を売ってはいられないから、それを機会きっかけにお神輿みこしを上げた。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「口説かれるのも下拙だし、気は利かないし、ばつは合わず、機会きっかけは知らず、言う事はまずし、意気地は無し、」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
というを機会きっかけにもう別懇になってしまった。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
こんな事でもその機会きっかけがこんがらかると、非常な、不思議な現象が生ずる。がこれは決して前述べた魔の仕業しわぎでも何でもない、ただ或る機会から生じた一つ不思議なはなし
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日外いつぞや重役の星野さんが何かの機会きっかけ
社長秘書 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
けれども何の張合もなかった、客は別に騒ぎもせず、さればって聞棄ききずてにもせず、なん機会きっかけもないのに、小形の銀の懐中時計をぱちりと開けて見て、無雑作に突込つッこんで
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「……あったかい!……」を機会きっかけに、行火あんかの箱火鉢の蒲団ふとんの下へ、潜込もぐりこましたと早合点はやがってんの膝小僧が、すぽりと気が抜けて、二ツ、ちょこなんと揃って、ともしびに照れたからである。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
機会きっかけもなしにまた笑い
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)