染物そめもの)” の例文
この渓谷けいこくの水が染物そめものによくてきし、ここの温度おんどかわづくりによいせいだというか、とにかく、おどしだに開闢かいびゃくは、信玄以来しんげんいらいのことである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御存じの烈しいながれで、さおの立つ瀬はないですから、綱は二条ふたすじ染物そめものをしんしばりにしたように隙間すきまなく手懸てがかりが出来ている。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平常吾々が生活に用いるものをすべて訪ねたいと思います。焼物やきものもあり、染物そめものもあり、織物おりものもあり、金物かなものもあり、塗物ぬりものもあり、また木や竹や革や紙の細工などもあるでしょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
紙幣さつ菓子くわしとの二つりにはおこしをおれとしたるものなれば、いま稼業かげうまことはなくとも百にんなか一人ひとりしんからのなみだをこぼして、いておくれ染物そめものやのたつさんがこと
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ずつとさかしたはうの三浦屋うらやという宿屋やどやはうんでくのもあります。むら染物そめものをする峯屋みねやへも、俵屋たはらやのおばあさんのうちへも、和泉屋いづみや和太郎わたらうさんのおうちへもんできました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
請取うけとり川越の地へ歸りけりあとに皆々此※をはづさず近々に江戸表へくだらんと用意にこそはかゝりける先呉服物一式いつしきは南部權兵衞是を請込うけこみ染物そめものは本多源右衞門塗物ぬりものの類は遠藤森右衞門が引請夜を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
河べりに近いうちでは、糸やあさをさらしていた。そのとなりでは染物そめものをしている。また一けんでは鹿皮しかがわをなめし、小桜模様こざくらもよう菖蒲紋しょうぶもん、そんなかたおきをしているうちもあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま彼女たちがおどしだにでつくっている、具足ぐそくまく旗差物はたさしものや、あるいは革足袋かわたび太刀金具たちかなぐ刺繍ししゅう染物そめものなどの陣用具じんようぐは、すべてそれ小太郎山こたろうざんのとりでへおくるべきうつくしい奉仕ほうしだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)