木鉢きばち)” の例文
突然バタバタとすずめが二羽、すぐそばへとびおりで来た。そして石の上に置かれた、良寛さんの木鉢きばちのふちに、ひよいひよいととびうつつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
「お木鉢きばちをこしらえてるの」と、男の子が返事をしました、「ぼうやが大きくなったら、このお木鉢でおとうちゃんとおかあちゃんに食べさせたげる」
囲炉裏ゐろりは五尺あまり、ふかさははひまで二尺もあるべし、たきゞおほき所にて大火おほびくゆゑ也。家にかちたるものは木鉢きばちの大なるが三ツ四ツあり、所にて作るゆゑ也。
立ち並ぶ仮屋に売り声やかましくどよんで、うす木鉢きばち手桶ておけなどの市物が、真新しい白さを見せている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ひいさんがふしぎにおもっているうちに、おかあさんは、かまわずその上にまた、ひいさんのからだのかくれるほどの大きなうるしぬりの木鉢きばちを、すっぽりかぶせてしまいました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
耕平は、さっきっぺたの光るくらゐご飯を沢山喰べましたので、まったくうれしがって赤くなって、ふうふう息をつきながら、大きな木鉢きばちへ葡萄のつぶをパチャパチャむしってゐます。
葡萄水 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
パイというお菓子は素人しろうとにむずかしいものですが饂飩うどんやお蕎麦そばを打つ人にはきに覚えられます。やっぱり木鉢きばちいたと展し棒を使うので、上等にすると石の展し板が熱を持たないで良いのです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
径には砂がかきならされていて、両側には木鉢きばち橙樹だいだいが並んでいた。
卓子掛テーブルかけのない大きな食卓の列の上には、きん蒔絵まきえのある色塗りの木鉢きばちがそれぞれ幾つかずつ置かれて、その中に水っぽい黍粥きびがゆが盛ってあった。患者達は長い腰掛に坐った。黒パンが一片ずつ配られた。
木鉢きばち杓子しゃもじを始め胡桃くるみの一枚皮で出来たや、山芝で編んだ「びく」即ち背負袋や、しなの木の皮のみのなど、いずれもこの土地あってのものであります。日本の民具を語るよい例となるでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
(たれむしろをする事堂上だうしやうにもありて古画にもあまた見えたる古風なり)勝手の方には日用のうつはあまたとりちらしたるなかに、こゝにも木鉢きばち三ツ四ツあり、囲炉裏ゐろりはれいの大きくふかきの也。
○秋山の産物、木鉢きばちまげ物るゐ山をしきすげなは板るゐ也。