木菟みみずく)” の例文
しかたなしに権三も、大蔵にならって、そばの岩に腰かけたが、こんな眺めは見飽きている彼なのだ。木菟みみずくにそっくりな瞼の皮をショボつかせ
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無智で野蛮で狂信を政治闘争に利用されている木菟みみずく党たるブルターニュの農民の特質がなかなか立派にかけている。
夕暮のさぎが長いくちばしで留ったようで、何となく、水の音も、ひたひたとするようだったが、この時、木菟みみずくのようになって、とっぷりと暮れて真暗まっくらだった。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
在るものは欅並木に、冬の月、仕舞って帰った茶屋の婆が、仕舞い忘れた土産の木菟みみずく。形は生ものでも実は束ねた苅萱かるかや。これなら耳があったとて大事なかろう。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すすきの木菟みみずくしゅんはずれで、この頃はその尖ったくちばしを見せなかったが、名物の風車は春風がそよそよと渡って、これも名物の巻藁にさしてある笹の枝に
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昼間の梟と木菟みみずくがかういふ具合にヂッと止つてゐるものだが、あれだつて見た恰好は決して気持のいいものでないが、昼間は物が見えないのだと分つてゐるし、金網の中にゐるものだから
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
境辻三……巡礼が途にまどったような名の男の口から、直接じかに聞いた時でさえ、例のうぐいすの初音などとは沙汰さたの限りであるから、私が真似まねると木菟みみずくに化ける。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おれだって、ぎょッとしたよ。たしかその三年前か、木菟みみずくの権三は、水分みくまりの雨乞い祭りの晩、神社の石だんの下で、喧嘩相手にたたきつけられ、血ヘドを
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真暗まっくらな杉にこもって、長い耳の左右に動くのを、黒髪でさばいた、女顔の木菟みみずくの、あかくちばしで笑うのが、見えるようですさまじい。その顔が月に化けたのではない。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
権三の異名は木菟みみずくといった。いつも昼間がまぶしそうで野呂のろッとしている顔つきは、いっこう忍ノ者らしくない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果してしからば、我が可懐なつかしき明神の山の木菟みみずくのごとく、その耳を光らし、その眼を丸くして、本朝ののために、形をおおう影の霧を払って鳴かざるべからず。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まもなく、放免溜りから、眼の大きな、木菟みみずくみたいな顔の男が出て来て、彼の前にうずくまった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……縞の羽織、前垂掛だが、折目正しい口上で、土産に京人形の綺麗な島田と、木菟みみずくの茶羽のねりもの……大贔屓の鳥で望んだのですが、この時は少々くすぐったかった。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人物画では、布袋図、花鳥図ではさぎかりなどが多い。野馬の図、楢に木菟みみずく、柳に鵯、梅花に鳩、葡萄に栗鼠りすなど、わりあいに画題を多種に扱っているが、それとてどこか、古画の構図のにおいがする。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巣から落ちた木菟みみずくひよッ子のような小僧に対して、一種の大なる化鳥けちょうである。大女の、わけて櫛巻くしまきに無雑作に引束ひったばねた黒髪の房々とした濡色と、色の白さは目覚しい。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは外套の頭巾ばかりを木菟みみずくに被って、藻抜けたか、辷落すべりおちたか、その魂魄こんぱくのようなものを、片手にふらふらと提げている。渚に聞けば、竹の皮包だ——そうであった。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
和尚が長い頭巾のを、木菟みみずくむくりともたげると、片足を膝頭ひざがしらへ巻いて上げ、一本のすねをつッかえ棒に、黒い尻をはっと振ると、組違えに、トンと廻って、両のこぶしを、はったりと杖にいて
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
並んでいる木菟みみずくにも、ふらふらと魂が入ったから、羽ばたいて飛出したと——お大尽だいじんづきあいは馴れていなさるだろうから、一つ、切符で見ようじゃありませんか、というと、……嬉しい
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木菟みみずくが、ぽう、と鳴く。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木菟みみずくの女性である。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)