新手あらて)” の例文
どうか諸君も共に、この文明的運動の新手あらてとなって我々の働きに一臂いっぴの力を添えられんことを我輩は希望してまぬ(拍手大喝采)。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
これは、今後も当分効果のある新手あらてとして目下大流行である。何しろ、婚約者だというんだから老年の「支配階級」も手が出ない。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
『最上』の光線に第二発動機を焼かれ、翼を傷つけられたよろよろの『荒鷲』が、どうして新手あらての潜水遊撃隊と戦うことが出来ようか。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
そうはいったが、暁天ぎょうてんの光を見たなら、ふもとから孫兵衛や有村が、原士の新手あらてをすぐって、ここへせてくることは分っていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「左様なことを言わずにもう一丁融通致せ、新手あらてを入れ替えて、貴様と太刀打ちをしてみたい、ごと仇を取って見せる」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『あゝ丈夫だよ。爺さんがもう時世にいて行けなくなる頃には、息子がちやんと入れ代りに新手あらてをつくつて置いてくれる。うまく出来たものさ』
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
私が舵を操っていて、船長とレッドルースとの二人の新手あらてがオールを漕いでいたのだ。「舟はしおに流され通しです。もう少し強く漕げませんか?」
江戸ではまだこの新手あらてを知るまいと思ったので、かれらはその首をかかえ出して神田や深川で例の軍用金を徴収した。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
種々いろいろ仕掛は楽屋にちゃんと用意してあるはずだ。顔へすすを塗る手は古いが、眼尻へ鬢付油びんつけあぶらを塗って、頬の引っつりを無二膏むにこうこしらえるとは新手あらてだったね。
「これおのれらどこへ行く!」真っ先の一人が声を掛けたが、さっき宗三郎に切り立てられ、あやうく逃げた伊集院で、新手あらてをひきいて現われたのである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
元々通り蓋して置くという新手あらてには、気附かなかったと見えて、天井板が一枚もはがれていないことを確めると、もうそれ以上の穿鑿せんさくはしませんでした。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこへ迫って参りました新手あらての雑兵数人には眼もくれず、のそりと経蔵のかげへ消えてゆかれました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
一同、火事装束の新手あらてを迎えて、何がなにやらわからないながらも、降雨の白い庭に力闘の真最中だ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
奥様はソンナお話がだいのお好きと仰言おっしゃる……恐れ入りやしたなあドウモ。そんな話を聞いてるうちに眼尻が釣上って来て自然と別嬪べっぴんになる……新手あらての美容術……ウワア。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
警官たちも今はこれまでと、下から銃器じゅうきでもって応じた。上と下とのはげしいうちあいはしばらくつづいた。警官たちは、どんどん新手あらてをくりだして、怪魔をめたてた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで、シャプリッツキイは前に負けた敵のところへ出かけて行って、新手あらての賭けをやった。
「夜這いの野郎を俺は見つけ次第、叩きのめしてやるんだが、次々に新手あらてがやってきやがる」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
で、ではわれ等の新手あらてがかかるゆえ、後につづかれいッ。——さ、かかれッ。かかれッ。
売春婦のリゼットは新手あらてを考えた。彼女はベッドから起きあがりざま大声でわめいた。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
成程、暫く忘れてゐたが、その頃篁の喧噪はいよいよ癇高い叫喚となり、それの劇しい交換の合間々々に新手あらての喚きが——四五歳の幼年らしい狂つたやうな泣き声が、聴きとれてくる。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
吾輩は元来ここまで一行を見送り、明日は失敬して帰京する予定なので、旅装も何もして来なかったが、新手あらての武者さえせ加わっては、見苦しく尻に帆掛けて逃出す訳にも行かない。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
第三期に小説の筆をつた者は、美妙斎びめうさい思案外史しあんぐわいし丸岡九華まるをかきうくわ漣山人さゞなみさんじんわたし五人ごにんであつたが、右の大改良後だいかいりやうご眉山人びさんじん新手あらてくはゝつた、其迄それまで川上かはかみ折〻をり/\俳文はいぶんなどを寄稿きかうするばかりで
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
……と思う間もなく、また次の新手あらてが三つ、ツイとこちらへ流れて来る。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
所望してまず腹内も丈夫になり、さてみなみな申すよう、「まず今宵こよいはここに止宿ありて打ちたまえ」とて、新手あらてを入れかえ、七人を相手として打ちしところ、甲乙なしにみな二目の勝ちとなり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
また新手あらてが来る。なんと云う御難だろう。
しかし、やがて時たつほど、むらがり立って、新手あらて新手と入りかわる城兵におしくずされ、伊那丸いなまるがたは、どっと二、三町ばかり退けいろになる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成程、それは恐ろしい新手あらてだ。雨戸を釘付けにして火をつけるといふ話はよく聽くが、中に休んでゐる者に知れないやうに、雨戸に釘を打込めるわけはない。
私たちはスペイン領アメリカ(註八五)にある一番近い港に船首を向けた。それは新手あらての水夫がなしに帰航するという危険を冒すことは出来なかったからだ。
そこへ迫つて参りました新手あらての雑兵数人には眼もくれず、のそりと経蔵のかげへ消えてゆかれました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
わたくし共の商売の道から云えば、これらはまぐれあたりかも知れませんよ。しかし幽霊の観世物を利用して人殺しを思いつくなぞは、江戸時代ではまあ新手あらての方でしょうね
博士は、車を停めると、双眼鏡そうがんきょうをとりだして、新手あらての人造人間部隊をじっとにらんでいたが
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、この時新手あらての勢が——すなわち土岐十郎頼兼を討った、山本九郎時綱の姿が、この館の背後に廻り、館に続いている民家を破壊し、館の築地と門とを破り、大挙して乱入した。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こんどは引き売りてえ新手あらて詐偽かたりを働いて、そいつもいっしょにつかまったとよ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
するとまた新手あらての加勢が三十人ほど駈けつけて敵は五十人ほどになった。
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
こうして新手あらてを加えた踊りの一隊は、小塚原を勢いよく繰出しました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
南からは新手あらてのB国大艦隊。——昭和遊撃隊は、いよいよ苦しい。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
で——麓の木戸から新手あらての声があがらぬうちにと、まだ真っ暗であるが、天堂一角の死骸を断崖の下に探そうとして、お綱と一緒に来たところであった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顏へすゝを塗る手は古いが、眼尻へ鬢附油びんつけあぶらを塗つて、頬の引つつりをかうで拵へるとは新手あらてだつたね。
新田先生一人さえ、かなりもてあましぎみだったのに、今度は二人の新手あらてが飛出した。ことに佐々刑事とは、この前、崖下で組打をやり、その時首を落されてしまったのである。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「だが、今度のは今までと違って、すこし新手あらてだな」と、半七は笑いながら云った。
半七捕物帳:41 一つ目小僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かねの音で引き退き法螺の音で新手あらてが出る。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ちょうど夜明けのとら下刻げこく(五時)頃から戦端は開かれていたので、新手あらて新手と代えても、甲軍は兵馬共にりんりたる汗と気息の疲れにつつまれていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「猿を使ってそんな事が出来るとすれば、こいつは聞いたこともない新手あらてだ」
だから、一つ又一つと苦心をして新手あらての方法を考えなければならない。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
相談の上で更に新手あらてをかんがえ出したのが怪談がかりの一件です。
半七捕物帳:41 一つ目小僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
妻女山より加勢の敵は、何分大兵、それに新手あらて、一概には支えかねおりますが、お味方こぞって、徐々と、この犀川、丹波島の此方へさして引揚げておりまする。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしそれは“新手あらてがわり”の扇開陣かと見えもする。——蜘蛛くもの子と散ったうしろ側の二段の陣には、旌旗せいき、弓列、霜のごとき矛隊ほこたいが、厳然として控えていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新手あらてをかえてこれだけの者が一太刀たちずつかすッても、たいがい息のねは止まってしまうだろうと思う
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばしは、鳴りもやまず、三河勢みかわぜいはその勢いと、新手あらて精鋭せいえいのために、さんざんになって敗走した。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堪忍かんにんをやぶって、鉄杖と鉄腕てつわんのつづくかぎり、あばれまわるのであるから、ほッたて小屋どうような狩屋建かりやだては片っぱしからぶちこわされ、召捕めしとろうとする、新手あらても新手も
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)