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文覺
すると
船頭共が、「
恁麽惡僧が
乘つて
居るから
龍神が
祟るのに
違ひない、
疾く
海の
中へ
投込んで、
此方人等は
助からう。」と
寄つて
集つて
文覺を
手籠にしようとする。
昔彼の
文覺と
云ふ
荒法師は、
佐渡へ
流される
船路で、
暴風雨に
會つたが、
船頭水夫共が
目の
色を
變へて
騷ぐにも
頓着なく、
大の
字なりに
寢そべつて、
雷の
如き
高鼾ぢや。
其時荒坊主岸破と
起上り、
舳に
突立ツて、はつたと
睨め
付け、「いかに
龍神不禮をすな、
此船には
文覺と
云ふ
法華の
行者が
乘つて
居るぞ!」と
大音に
叱り
付けたと
謂ふ。