才槌さいづち)” の例文
才槌さいづちで叩きこわそうとするを、兼松が勿体ないと云って留めている混雑中でありますから、助七は門口に暫く控えて立聞きをして居りますと
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大きな才槌さいづち頭が顔のほうにつれて盛上ってゆき、額にかけて、そこが庇髪ひさしがみのようなおでこになっていた。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
し損じたりとまた踏ん込んで打つを逃げつつ、げつくる釘箱才槌さいづち墨壺矩尺かねざし利器えもののなさに防ぐすべなく、身を翻えして退はずみに足を突っ込む道具箱、ぐざと踏みく五寸釘
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何しろ鉄の才槌さいづちを双方の足へしばり附けて歩いてるんだから、敏活の行動は出来ないはずだ。あの白い眼にじりじりやられたのも、満更まんざら持前の半間はんまからばかり来たとも云えまい。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おつと来たさの次郎左衛門じろざゑもん、今の間とかけ出して韋駄天いだてんとはこれをや、あれあの飛びやうが可笑しいとて見送りし女子おなごどもの笑ふも無理ならず、横ぶとりして背ひくく、つむりなり才槌さいづちとて首みぢかく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と恒太郎が腹立紛れに才槌さいづちを持って来て、長二の前へほうり出したから、お政は心配して
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふくはぎに小さい鉄の才槌さいづちしばり附けたように足掻あがきに骨が折れる。あわせの尻は無論端折はしおってある。その上洋袴下ズボンしたさえ穿いていないのだから不断なら競走でもできる。が、こう松ばかりじゃ所詮しょせんかなわない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おつとたさの次郎左衞門じろざゑもんいまとかけして韋駄天いだてんとはこれをや、あれびやうが可笑をかしいとて見送みおくりし女子おなごどものわらふも無理むりならず、よこぶとりしてひくゝ、つむりなり才槌さいづちとてくびみぢかく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
甚「此畜生分らねえ才槌さいづちだな、間抜め、殺したに相違ねえ、そんな奴を置くと村の難儀になるから、手前てめえを追出す代りに、己の口から訴人して、踏縛ふんじばって代官所へでも役所へでも引くからう思え」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と腰に挿していたかし才槌さいづちを助七の前へ投出しました。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)