手重ておも)” の例文
この遷都せんとは、しかし、今日こんにち吾人ごじんかんがへるやうな手重ておもなものでなく、一をくだい慣習くわんしふによつて、轉轉てん/\近所きんじよへお引越ひきこしになつたのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
だから人間の身体からだほど不思議なものはないと思うんだよ。あれほどお医者が手重ておもくいったものが、今までしゃんしゃんしているんだからね。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今以いまもつきもてもしないだらうから、御婦人方ごふじんがたには内證ないしようだが、じつ脚氣かつけで。……しか大分だいぶ手重ておもかつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
可成かな手重ておもくて二月ふたつきばかり隔離室かくりしつに寝ていた後のこと、若い軍医が、『大佐殿のチブスには症状しょうじょうに特別のところがありましたから、実はお案じ申上げて居りました』
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
廻したから、幸ひおぼれ死ぬのは助かつた。それに夜半過ぎからは引潮で、見付けた時は、顏だけでも水の上に出てゐたさうだ。運がよかつたのだな——尤も撲たれた頭の傷は少し手重ておもだが——
彼はやむをえなければ、お延の忠告通り、もう一返父に手紙を出して事情を訴えるよりほかに仕方がないと思った。それには今の病気を、少し手重ておもに書くのが得策だろうとも考えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
殊に靴までお隠しなさりますなぞは、ちと手重ておも過ぎまするで、どうも変でござりまするが、お年紀頃としごろ御容子ごようすは、先刻さっき申上げましたので、その方に相違ござりませぬか、お綺麗な、品のい、面長おもながな。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、丹波さんはそんなに手重ておもに仰有いますの?」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)