忽然たちまち)” の例文
われも其の真似をするが如く、息を凝らして覗き見るに、忽然たちまち、神気逆上して吾が心も、わが心ならず。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
忽然たちまち樣々さま/″\妄想まうぞう胸裡こゝろわだかまつてた、今日こんにちまでは左程さほどまでにはこゝろめなかつた、こく怪談くわいだん
御奉行所へ申しあげたる樣子ゆゑも角も惡事のあらはくちになりたりれば所詮しよせんかうしてはられず何でも足元のあかるいうち高飛たかとびをするより外に思案はなしと忽然たちまちもとの惡心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これが徃時むかしの、妻か、夫か、心根可愛や、懐かしやと、我を忘れて近寄る時、忽然たちまちふつと灯は滅して一念未生みしやうの元の闇に還れば、西行坐を正うして、能くこそ思ひ切り玉ひたれ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
見て乞食こつじきとや思ひけんコリヤ今頃に來たとて餘り物もなし貰ひ度ば翌日あす早くよと云れてお菊は忽然たちまちむねふさがり口惜なみだむせびながらも好序と思へば涙を隱し成程斯樣かやうな見苦敷姿なり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
固より丸木の橋なる故弟も堪らず水に落ち、僅に長者の立つたるところへ濡れ滴りて這ひ上つた、爾時そのとき長者は歎息して、汝達には何と見ゆる、今汝等が足踏みかけしより此洲は忽然たちまち前と異なり
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
面倒に思ひつゝ足にまかせて歩行あゆみける此金兵衞の行裝こしらへ辨慶縞べんけいじまの越後縮の帷子かたびら銀拵ぎんごしらへの大脇差し落し差に差て菅笠すげがさふか打冠うちかぶり鷲の宮迄來りけるこゝに畔倉重四郎は此頃つゞく不仕合に勝負しようぶの資本薄ければ忽然たちまち惡心あくしんはつし鴻の巣の金兵衞が大いにかつ在所ざいしよへ立歸るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)