山笹やまざさ)” の例文
その眼を避けようとして、世阿弥はあわてて身を引っ込めたが、おおいかぶさっていた山笹やまざさやつつじの葉がガサガサと動いたので
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半纏着はんてんぎは、みづあさいしおこして、山笹やまざさをひつたりはさんで、細流さいりう岩魚いはなあづけた。溌剌はつらつふのはこれであらう。みづ尾鰭をひれおよがせていははしる。そのまゝ、すぼりと裸體はだかつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
草履ぞうりに足を乗せると、彼は、そのおおきな体格にふさわしい大刀を腰に加えて、日々歩き馴れている山笹やまざさの小道を、飛ぶように、ふもとへ駈けて行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このくらゐのあめは、たけがさおよぶものかと、半纏はんてんばかりの頬被ほゝかぶりで、釣棹つりざをを、いてしよ、とこしにきめた村男むらをとこが、山笹やまざさ七八尾しちはつぴき銀色ぎんいろ岩魚いはなとほしたのを、得意顏したりがほにぶらげつゝ
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そういうと、彼は、暗い山笹やまざさ小径こみちをひろって、黙々と、館のほうへ降りて行った。あわてて木をすべり降りて来た新平太は、その影を後から追って駈け出していた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
居まわりの、板屋、藁屋わらやの人たちが、大根も洗えば、菜も洗う。ねぎの枯葉を掻分かきわけて、洗濯などするのである。で、竹のかけひ山笹やまざさの根に掛けて、ながれの落口のほかに、小さな滝を仕掛けてある。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)