屋後おくご)” の例文
わが庭広からず然れども屋後おくごなほ数歩の菜圃さいほあまさしむ。款冬ふきせりたでねぎいちご薑荷しょうが独活うど、芋、百合、紫蘇しそ山椒さんしょ枸杞くこたぐい時に従つて皆厨房ちゅうぼうりょうとなすに足る。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
征衣せいいのまま昼夜草鞋わらじを解かず、またその間にはしばしば降雪にい、ために風力計凝結ぎょうけつして廻転をとどむるや、真夜中にるが如き寒冽なる強風をおかして暗黒あんこく屋後おくごの氷山にじ登り
まして屋後おくごの花園には山ならでは見るを得られぬ珍しき草花咲き亂れて、苦吟ののちは、必ずその花園を逍遙するを常としたりと、友は秋海棠しうかいだうの花の咲きおくれたるをみつゝわれに語りぬ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
いずくにも人のはなくて、屋後おくごの松にせみのみぞかしましき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そして屋後おくごわらぶき小屋へ、火をかけろといいつけた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)