小蟹こがに)” の例文
銀子はそこで七八つになり、昼前は筏に乗ったり、攩網たもふなすくったり、石垣いしがきすきに手を入れて小蟹こがにを捕ったりしていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
庭へおりて見ると、小篠こざさの芽が、芝にまじって、すこやかな青さで出ていた。そのかげを赤い小蟹こがにが、横走りにけたり、はさみで草を摘んで食べている。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ふと貞之助は、足許に小蟹こがにが二匹ちょろちょろ歩いているのを見つけたが、大方この蟹どもは今の小川が氾濫したので、線路の上へ逃げて来たのであろう。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
水車のわきの小川には、いつも目高魚めだかや、泥鰌どぢやうや、田螺たにしや、小蟹こがにや、海老えびの子などがゐました。私たちはそれを捕つてバケツに入れ、カーン/\の鳴るまで、のんきにそこで遊ぶのでした。
先生と生徒 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
神職様かんぬしさま小鮒こぶなどじょうに腹がくちい、貝も小蟹こがにも欲しゅう思わんでございましゅから、白い浪の打ちかえす磯端いそばたを、八よう蓮華れんげに気取り、背後うしろ屏風巌びょうぶいわを、舟後光ふなごこうに真似て、円座して……翁様おきなさま
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蘆の根の小蟹こがには驚いて、穴にげ入るのも面白かった。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
小蟹こがにぶつぶつ石鹸しやぼんかし
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大蟹おおがに小蟹こがに
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悪戯いたずらや水いじりをしたり、または海草とか小蟹こがにとか雲丹うになどをあさってあるく子供や女たちの姿は、ようやく夏めいて来ようとしている渚に、日に日にえて来て
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)