ねたみ)” の例文
若き三人の女神おのおの三の山に住し今もこれを領したもうゆえに、遠野の女どもはそのねたみおそれて今もこの山には遊ばずといえり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
唯だ姫が側なる人をベルナルドオならんと疑ひしとき、我心のさわがしかりしは、ねたみなるかあらざるか、そはわが考へ定めざるところなりき。
ねたみふかき者なるが、此事をもれ聞きて瞋恚しんいのほむらに胸をこがし、しもをとこをひそかにまねき、『かの女を殺すべし、よく仕了しおほせなば金銀あまたとらすべし』
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
或は人をねたみにくみて我身ひとりたたんと思へど、人ににくまうとまれて皆我身の仇と成ことをしらず、いとはかなく浅猿あさまし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
十太夫に對するねたみだと感じ、又穴搜しだと感じたのである。文章に經史が引いてあるので、利章が書いたと云ふことはすぐにわかつて、怒は利章一人の上にかぶさつた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かのふちれいありといふは、むかし永光寺のほとりに貴人きにん何某なにがし住玉ひしに、その内室ないしつ色情しきじやうねたみにてをつとをうらみ、東光が淵に身をしづめ、冤魂ゑんこん悪竜あくりゆうとなりて人をなやまししを
それはねたみである。ドリスの噂に上ぼる人がみなねたましい。ドリスの逢ったと云う人が皆妬ましい。
体仁早世さうせいましては、皇子みこ五四重仁しげひとこそ国しらすべきものをと、われも人も思ひをりしに、五五美福門院びふくもんゐんねたみ五六さへられて、四の宮の五七雅仁まさひとうばはれしは深きうらみにあらずや。
しかも浅次郎はその身より十ばかりも年嵩としかさなる艶婦にちぎりめしが、ほど経て余りにそのねたみ深きがいとわしく、否しろその非常なる執心の恐ろしさに、おぞふるいて、当時予が家に潜めるをや。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
逆上とねたみとの為めである。
さて良秀の娘は、面目を施して御前を下りましたが、元より悧巧な女でございますから、はしたない外の女房たちのねたみを受けるやうな事もございません。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かのふちれいありといふは、むかし永光寺のほとりに貴人きにん何某なにがし住玉ひしに、その内室ないしつ色情しきじやうねたみにてをつとをうらみ、東光が淵に身をしづめ、冤魂ゑんこん悪竜あくりゆうとなりて人をなやまししを
一 嫉妬の心努〻ゆめゆめおこすべからず。男婬乱なればいさむべし。いかりうらむべからず。ねたみ甚しければ其気色言葉も恐敷すさまじくして、却て夫にうとまれ見限らるゝ物なり。若し夫不義あやまちあらば我色をやわらげ声をやわらかにして諫べし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さて良秀の娘は、面目を施して御前を下りましたが、元より悧巧な女でございますから、はしたない外の女房たちのねたみを受けるやうな事もございません。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)