図抜ずぬ)” の例文
旧字:圖拔
が、妙覚尼も云う通り図抜ずぬけて大きい彼の魁偉かいいな容貌が、その身長との不釣り合いのために一層人を威壓したことは、想像に難くない。
転席の余地がないので、不便な姿勢と図抜ずぬけた大声を忍ばなければならなかった二人の云う事は一々津田に聴こえた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
素気無そっけなかおには青筋あおすじあらわれ、ちいさく、はなあかく、肩幅かたはばひろく、せいたかく、手足てあし図抜ずぬけておおきい、そのつかまえられようものなら呼吸こきゅうまりそうな。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
身体の養生さて又心の養生法は右のごとしとして、身の養生は如何どうだと申すに、私の身に極めてよろしくない極めて赤面すべき悪癖は、幼少の時から酒を好む一条で、かも図抜ずぬけの大酒
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
図抜ずぬけて大きな眼鏡をかけた材木屋の隠居も、どうやら残り惜しい顔をしている。
時々図抜ずぬけた大きな声で先生とう。先生にはこたえた。今まで物理学校で毎日先生先生と呼びつけていたが、先生と呼ぶのと、呼ばれるのは雲泥うんでいの差だ。何だか足の裏がむずむずする。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)