まじな)” の例文
何のまじないかあわてて煙草を丸め込みその火でまた吸いつけて長く吹くを傍らにおわします弗函どるばこの代表者顔へ紙幣さつった旦那殿はこれを
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
此等の木は、たぐさとして、まじなひをする木と言ふ事である。たぐさは踊りを踊る時に、手に持つ物で、呪術の力を発揮するものである。
花の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
千隆寺の坊主というのは、根岸の自分たちのつい近所にいて、立川流とかなんとかいって、子を産ませるおまじないをする山師坊主の群れだ。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これをでるのに十二月という新春のまじない木を焚き、また家に飼っている鳥けものにもこれを食べさせたということである(布部郷土誌)。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
でたくらいで割り切れる訳のものではない。今度はひだりの方をのばして口を中心として急劇に円をかくして見る。そんなまじないで魔は落ちない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と羽根つきながら風が出てくるとまじないに唄う大川端の下邸跡しもやしきあとである。向岸には大橋の火の見やぐらがあって、江戸風景にはなじみ深い景色である。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
落書がある、身をすり寄せたあともみえる、子供達は手をつないで鬼ごっこをしている。また遠慮なくおまじないの札がはりつけてあるのも円柱である。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
そのまじなひのせゐうかは知らないが、主殿頭は、身分不相応に出世して、紀州藩の小役人から老中らうぢゆうにまでなつた。それを噂に聞いた当時の人達は
「まさか魔法使いでもあるめえ。あんな物を持ち廻って、何か祈祷かまじないでもするか、それとも御禁制の切支丹か」
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女はそういった後で、なおも恐ろしさの餘りか、目を閉じてブツブツおまじないのようなことを口の中でいった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ああまたドアと鍵か、犯人はまじない屋か錠前屋か、いったいどっちなんだい。まさかにジョン・デイ博士の隠顕扉が、そうザラにあるという訳じゃあるまい」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
一面に般若心経のお経の文句を書きつけ「これでまじなひはいゝが、今晩例の武士が呼びに来ても驚いてはいけない。動いてはいけない、声を立ててはいけない」
父八雲を語る (新字新仮名) / 稲垣巌(著)
後から後からと他の学科が急立せきたてるから、狼狽あわてて片端かたはしから及第のおまじないの御符ごふうつもり鵜呑うのみにして、そうして試験が済むと、直ぐ吐出してケロリと忘れて了う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
第一、そんなことをすれば祈り殺すおまじないになるなんていうことをすら私は知っていなかったのだ。
君子の父は自分が四国遍路のときに携えたありがたいものだという杖を持ち出して寝ている病人の頭を撫でたり、まじないを唱えたりして夜どおし妻の枕元で看病していた。
抱茗荷の説 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
空に徹せよ げに般若の真言こそ、世にも尊く勝れたるまじないです。最も神聖なる仏陀ほとけの言葉です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
貧民窟の四辻には毎朝毎晩、厄除のまじなひが、三宝の上に赤飯を盛つた土器かわらけと赤紙の御幣を載せ、丁寧なものになるとお燈明までもつけて、捨てられてあるのが見受けられた。
驢馬ろばが頭を下げてると荷物があんまり重過ぎないかと驢馬追いにたずねましたし家の中であかぼうがあんまり泣いていると疱瘡ほうそうまじないを早くしないといけないとお母さんに教えました。
毒もみのすきな署長さん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すでに世謡ユーウテーがあって国王が立つと吉日をえらんで官吏を禁中に集め、それから国中の男女を平等所ひらじょ(警察と裁判と監獄とを兼ねた所)に集めてトキ(覡)ユタ(巫)がまじないをして灰を焼き
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
軽焼が疱瘡痲疹の病人向きとして珍重されるので、疱瘡痲疹のまじないとなってる張子はりこの赤い木兎ずくや赤い達磨だるまを一緒に売出した。店頭には四尺ばかりの大きな赤達磨を飾りつけて目標めじるしとした。
そして何かおまじないを唱えながら、びんに残っている浸酒を病人に飲ませます、もっとも、すっかりではございません、そんなときにはいつも少々残しておいて、自分でも飲むのでございます
その代り日が暮れるまでこの荒地あれちを少し散歩してみたいと思います。そうすれば明日の調べには地理が分って好都合ですから。それからこの蹄鉄は幸運のおまじないにポケットへ入れて行きましょう
しげしげ通行する鉱山の人夫の中には、性質たちのよくないのが居るかも知れぬ、うっかりすると荷物を盗まれるおそれがあるので、実君の発案に従ってちょいとおまじないをしたのだ、鎮西八郎お宿の格である。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それで、どうぞ今しばらくの間はご出産にならないようにとお祈りになって、そのおまじないに、お下着のおこしのところへ石ころをおつるしになり、それでもって当分お腹をしずめておおきになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
するそうだが、そのおまじないとしては、その場で、男ならば左の足、女ならば右の足を、十文字に切って置きさえすればよい……
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
枯れてしまってはまじないの効目ききめもあるまいと思ったので、お琴は庭から新らしい葉を折って来て、人に頼むまでもなく、自分がその葉を吊り換えようとする時
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「君、その金貨はうしたんだね、先刻さつきから訊かう訊かうと思つてたんだが、まさかまじなひぢやあるまいね。」
なアもし大隅先生。……もしわたしの思い違いなら許して貰いますが、先生がたはあの魔の森へお入りじゃったのではないかのう。もしそうなら、ぜひ悪魔払いのおまじないを
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あんな声を出して何のまじないになるか知らん。御維新前ごいっしんまえ中間ちゅうげんでも草履ぞうり取りでも相応の作法は心得たもので、屋敷町などで、あんな顔の洗い方をするものは一人もおらなかったよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女の子は笑って何かかすかにまじないのような歌をやりながらみんなを指図しています。
ツスはあらゆる穀粒の中でも、最も大きくかつ堅実であった故に、時としてこれを稲の豊熟のまじないにも、応用せられることがあったかと、私は想像しているのだがまだ断定は決してできない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
淡島屋のでなければ軽焼は風味も良くないし、疱瘡痲疹のまじないにもならないように誰いうとなく言いはやしたので、疱瘡痲疹の流行時には店前みせさきが市をなし、一々番号札を渡して札順ふだじゅんで売ったもんだ。
「禅師、これは凡夫ぼんぷ如来ほとけになるまじないです」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「ウフ、そのお得意のおまじないをするために、こうしてやって来たわけなんだよ。だが、どうも人殺しのあった部屋というのは、急に陰気に見えていけないネ。なんとこれは……」
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
夜泣きのまじないじゃあるまいしと、お絹は思わず噴き出したことがあった。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まじなひぢやない、寄附金さ。」と哲学者はいつもの皮肉な調子で言つた。
「いったいお念仏はなんのまじないになるか」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「先生、そりゃ何のおまじないだえ」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それを拝めばコロリよけのおまじないになると云うことでしたね」
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「これは避雷針かい、それとも雷避けのおまじないかい」
(新字新仮名) / 海野十三(著)