あゝ)” の例文
あゝ、当年豪雄の戦士、官軍を悩まし奥州の気運を支へたりし快男子、今は即ち落魄らくはくして主従唯だ二個、異境に彷徨はうくわうして漁童の嘲罵にふ。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
尊い上人様の御慈悲は充分了つて居て露ばかりも難有う無は思はぬが、あゝどうにもかうにもならぬことぢや、相手は恩のある源太親方、それに恨の向けやうもなし
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ほんに御門の前を通る事はありとも木綿着物に毛繻子の洋傘かうもりさした時には見す/\お二階の簾を見ながら、あゝお關は何をして居る事かと思ひやるばかり行過ぎて仕舞まする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
関白家の罪は関白の例を引き行はるきの事、もつとも理の正当なるべきに、平人へいにんの妻子などのやうに、今日の狼藉らうぜき甚だ以て自由なり、行末ゆくすゑめでたかるべき政道にあらず、あゝ、因果のほど御用心候へ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ほんに御門ごもんまへとほことはありとも木綿着物もめんきもの毛繻子けじゆす洋傘かふもりさしたときにはす/\お二かいすだれながら、あゝせきなにをしてことかとおもひやるばかり行過ゆきすぎて仕舞しまひまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼処かしこにホーマーあり、シヱークスピーアあり、彗星の天系を乱して行くはバイロン、ボルテーアの徒、流星の飛び且つ消ゆるは泛々はん/\たる文壇の小星、あゝ、悠々たる天地、限なく窮りなき天地
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
左のみ珍らしいとは思ひませぬけれど出際に召物の揃へかたが惡いとて如何ほど詫びても聞入れがなく、其品それをば脱いでたゝきつけて、御自身洋服にめしかへて、あゝわし位不仕合の人間はあるまい
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
汝の耳には兵隊の跫音あしおとを以て最上の音楽として満足すべし、汝の眼には芳年流の美人絵を以て最上の美術と認むべし、汝の口にはアンコロを以て最上の珍味とすべし、あゝ、汝、詩論をなすものよ、汝
漫罵 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
のみめづらしいとはおもひませぬけれど出際でぎは召物めしものそろへかたがわるいとて如何いかほどびても聞入きゝいれがなく、其品それをばいでたゝきつけて、御自身ごじゝん洋服ようふくにめしかへて、あゝ私位わしぐらゐ不仕合ふしあはせ人間にんげんはあるまい
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)