初陣ういじん)” の例文
我十六歳にして三州小豆坂あずきざか初陣ういじんして以来五十余戦、未だ鬨の声ばかりで鶏軍した覚えがない。諸軍力をあわせずして如何いかんぞ勝とうや。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ねがわくば、この少年の初陣ういじんのために、ひと言、勇ましく働けと、お励ましを賜わるなれば、どんなにありがたいことかわかりません
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かっぽじって、よっくきけよ。かく申すそれがしは、トビの文字山もじやま初陣ういじんより、かっておくれをとらぬ、大久保彦左ヱ門忠教——
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
伝え聞くところによると、東山道総督として初陣ういじんの途に上った岩倉少将はようやく青年期に達したばかりのような年ごろの公子である。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
少佐は初陣ういじんの手柄だからうれしそうだ。清君も、大きな任務をはたしたものだから、心臓の血が、どきどきとおどっている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
明日の合戦幸先さいさきよし、上方では初陣ういじん、ここでがんりきの腕を見せて、甲州無宿の腕は、片一方でさえこんなもの、というところを贅六ぜいろくに見せてやる。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かくして法師丸は父の字名あざなの一字をもらって河内介輝勝かわちのすけてるかつと名のり、同じ年の夏には一閑斎に従って箕作城みづくりじょうの城攻めに加わり、早くも初陣ういじんの功を立てた。
「これから伊勢いせ北畠きたばたけを攻めにまいる。おまえにも兵を預けるからひと合戦してみろ。初陣ういじんに鶴千代では名が弱い。今日から忠三郎賦秀たださぶろうたけひでと名乗るがよい」
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
卒業生諸君は数年勉強の結果、今日この名誉ある得業の証書を貰って始めて社会に御出になるのは、まずいわば複雑なる社会に於て勇戦奮闘する初陣ういじんである。
現に半七はその年の十二月に、小柳という女軽業師の犯罪を探索して、初陣ういじんの功名をあらわしている。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
初陣ういじんの此の若武者わかむしゃ、霧に打たれ、雨に悩み、妖婆ようばのために取つて伏せられ、しのびをプツツリ切つて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その初陣ういじんの門出にまでも、怪しい運命の糸につき纏われて、恨み散り行く花の精の抜け出したような、あのひとの姿を、今ここで見るというのは何たることであろう。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
次郎は、父の本心がわかったうえに、ほめてまでもらったので、初陣ういじんにでも臨むような、わくわくする気持で立ち上りかけた。俊亮は、しかし、彼を手でせいしながら
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
今から考えて見ると、この商売は何よりも性にかなっていた。抜け駈けだったが、直ぐに初陣ういじんの功名をした。手張りをやるなと言われても、やらないでいられるものでない。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
腰に帯びた刀は二尺四寸五分の正盛まさもりで、先祖島村弾正が尼崎で討死したとき、故郷に送った記念かたみである。それに初陣ういじんの時拝領した兼光を差し添えた。門口には馬がいなないている。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
とび巣山すやま初陣ういじんを自慢の大久保彦左ひこざがあとにも先にもたった一度んだという句に
何せこの歳まで、本物の戦さと申すものは人の話に聞くばかり、今になって顧みますと可笑おかしくなりますが、小半時ほどは胴のふるえがとまりません。いやはやとんだ初陣ういじんぶりでございました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
この初陣ういじんの功名に乗じて続いて硯友社の諸豪とくつわならべて二作三作と発表したなら三唖もまた必ず相当の名を成して操觚そうこの位置を固めたであろうが、性来の狷介と懶惰とズボラとが文壇にも累をなし
和子さまはしきりとお父上の側へ来たいような顔色でありましたが、初陣ういじんの意気ごみは格別で、お元気に竹中殿へいてゆかれました
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二つ三つ肝腎な注意をすると、わが子の初陣ういじんを送り出す親のように、緊張した心で今戸の現場へ送り出してやるのでした。
兎に角みんなが法師丸の雄々しい姿をめそやして、「初陣ういじんの時の武者振むしゃぶりが見たい」とか、「こう云う世継ぎをもうけておられる武州殿は仕合わせだ」
そういう学士も維新の戦争に出た経歴のある人で、十九歳で初陣ういじんをした話がよく出る。塾では、正木大尉はもとより、桜井先生も旧幕の旗本はたもとの一人だ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お殿様にもお気に入り、朋輩衆にも嫉まれず、それが女の腕というもの。まあ初陣ういじんと思うて乗り込んでごらん」
「仕方がない。初陣ういじんで戦死するのも運命だ。」フーラー博士は、心の中で最後の決心をした。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
吉五郎は酒癖のよくない男であったが、子分たちに対しては親切に面倒を見てくれた。半七は一年ばかりその手先を働いているうちに、彼の初陣ういじんの功名をあらわすべき時節が来た。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何せこの歳まで、本物の戦さと申すものは人の話に聞くばかり、今になつて顧みますと可笑おかしくなりますが、小半時ほどは胴のふるへがとまりません。いやはやとんだ初陣ういじんぶりでございました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
ほかのことでもおりない。明日はわれらの初陣ういじんじゃほどに、なんぞはなばなしい手柄をしてみたい。ついてはお身さまの猩々緋と唐冠の兜をしてたもらぬか。あの服折と兜とを着て、敵の眼を
(新字新仮名) / 菊池寛(著)
それから教師がう来てくれぬ。そこでこの理科は先刻御話しする通り初陣ういじんに失敗をしたのである。この理科の失敗は千歳の遺憾である。理科どころではない。それから工科もやはりやられなかった。
初陣ういじんです。恐れ入りますが、その陣羽織を」
恩師 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「でも、叔父ぎみは、そんな世間見ずではいけない。正行もはや十四、初陣ういじんもすべき年ごろなのに……と再三、母上へお手紙を下さいました」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ初陣ういじんの功を立てる年頃ではないとしても、今のうちから親しく剣戟けんげきのあいだをくゞって、勇士の働きとはどんなことをするものか知りたいと思った。
副総督の八千丸やちまるも兄の公子に負けてはいないというふうで、赤地の錦の装束に太刀たちを帯び、馬にまたがって行ったが、これは初陣ういじんというところを通り越して、いじらしいくらいであった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ああ昭和遊撃隊は、初陣ういじんで、はやくも敵の前進根拠地を占領するのか。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
初陣ういじんの不覚は生涯附きまとうものだと、むかしの武士は言い習わしているが、わたしの初陣は実にかくの如き不覚を以て終始したのである。その不覚のいつまでも附き纏うのは是非ないのであろう。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ケチをつけるなよ。初陣ういじんだ」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ここは、戦場、そちにとっては、一人前のさむらいに、成るか成らぬかの初陣ういじんの場所、父のそばへ帰ったなどと思うなよ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういうところへ、しばらく陣地を退いていた病軍師竹中重治は初陣ういじんの少年、黒田松寿丸しょうじゅまるれて戻って来たのであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「正行にせがまれて、この母も共に、ぜひこのたびは初陣ういじんにと、きのうもお願いいたしましたが、待て、考えておこう、と仰っしゃったきりなので」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初陣ういじんとは、元服以上大事な日だ。初めて烈しい世へ出て、世の大敵と渡りあうこと。——悔いのない相手と正義の戦場をえらばねばならん」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのとき凌統は、まだ十五歳の初陣ういじんだったが、いつかはその怨みをすすごうものと、以来悲胆をなだめ、血涙をのみ、日ごろ胸に誓っていたものである。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虎之助は具足のをむすんでいた。彼もことし二十二の若者とはなっている。市松と同様に、三木城攻略、そのほかにおいて、初陣ういじんもすみ、ひとかどの働きもしていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれほどな父を持ち、これほどな恩師を持ち、そちはよほどしあわせ者だ。さだめし行末よい武勲ぶくんを持つだろう。重治にいて中国へけ。信長がその初陣ういじんを祝うてとらせる」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初陣ういじんとあって意気すでに天をのみ、日ならずして大興山の麓へ押しよせてみたところ、賊の五万は、嶮にって、利戦を策し、山のひだや谷あいへしらみのごとく長期の陣を備えていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初陣ういじんの若者が大将の首でもったように、雀躍こおどりして持ち込んで来た物がある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですが、母ぎみも、それほどまでに正行まさつらがいうならばと、お泣きにはなりましたけれど、しまいにはおこころよく、初陣ういじんなればと、この具足やら身支度も、お手ずから私に着せてくださいました。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦ふたりが仲の初の児。いわばおぬしと俺との、これは初陣ういじんの賜物」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお。戦というものを見てやろうと、初陣ういじんに、ここへ来たのだ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらく、初陣ういじんであったろう。共に細川藤孝ふじたかの子である。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不知哉丸さまの初陣ういじんともしていただきとうぞんじまする
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初陣ういじんなれば——)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)