出来いできた)” の例文
旧字:出來
普通なみの小さきものとは違いて、夏の宵、夕月夜、ひともす時、黄昏たそがれには出来いできたらず。初夜すぎてのちともすればその翼もて人のおもておおうことあり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折柄警部は次のにて食事中なりしかば其終りて出来いできたるを待ち突如だしぬけに「長官大変です」荻沢は半拭はんけちにて髭のよごれを
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
今日そんな酷い事は出来ず、人の言語は天賦で自ずから出来いできたるか、他より伝習して始めて成るかを判ずるにこれら狼に養われた児輩に拠るのほかないと言った
折から縁に出来いできたれる若き女は、結立ゆひたて円髷まるわげ涼しげに、襷掛たすきがけの惜くも見ゆる真白の濡手ぬれてはじきつつ、座敷をのぞき、庭をうかがひ、人見付けたる会釈のゑみをつと浮べて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もし、出来いできたることにつきて、よく/\思量すべきなり、所詮は事にふれて、名聞我執を捨つべきなり
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
兎角京童きやうわらべ口善悪くちさがなき、飛んだ迷惑をするものも出来いできたれる次第なるが、これも一つは「人生」といふ字の意義の誤解され易きに因せし者なれば、無暗に敵になり味方になる事なく
人生の意義 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
出来いできたるべき前表ぜんぺうなりけん
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
愛に対する道徳の罪人は那辺なへんにか出来いできたらむ、女子はじやうのために其夫を毒殺するの要なきなり。男子は愛のために密通することを要せざるなり。
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この一筋道を行くなれば、もしかの人の出来いできたるに会はば、のがれんやうはあらで明々地あからさまおもてを合すべし。さるは望まざるにもあらねど、静緒の見る目あるを如何いかにせん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何事をか残員のこりいんと問答せし末、出来いできたりて再び余を従えつ又奥深く進み行き、裏庭とも思わるゝ所に出で、を横切りて長き石廊に登り行詰る所に至ればいかめしき鉄門あり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
... 見い、それまで先ず辛抱したまえ」とて是よりおよそ二十分間ほど立たれど細君は出来いできたる様子なし目「是だけ待て出て来ねば此上待つにも及ぶまい、来たまえ、さアゆこう」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
しとやかに紙門ふすま押啓おしひらきて出来いできたれるを、たれかと見れば満枝なり。彼如何いかなれば不躾ぶしつけにもこの席にはあらはれけん、と打駭うちおどろけるあるじよりも、荒尾が心の中こそ更にたぐふべくもあらざるなりけれ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
図らざりきかゝる堂々たる大議論が女流の口より出来いできたらんとは
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)