)” の例文
風はないが、ひじょうな寒さで、もう地面が凍っているとみえ、従者たちが歩くと、足の下でみしみしと、みた土の鳴る音がした。
初枝は十二の冬、村の小学校への行きがけに、みついた雪の上に誰かに突き転がされて、それがもとで今の脊髄炎せきずいえんを患ったのだった。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
さういへば、鶫も小雉もすつかり、眼の角膜が変色してみてゐる。これは小鳥売買組合出張所の、商人の手を経たものらしい。
希臘十字 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
その年の冬は永く続いて寒さとみは、野の作り物を遅らせ、夏の初めには飢饉ききんのきざしさえ見え、雨は月と月にまたがっても降らなかった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
これは工学部の方の仕事で、時々水に浸してはこの室の中に持ち込んでおいて、どの石や煉瓦がみ割れるかという実験なのだそうである。
低温室だより (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
一度降ったら春まで溶けずにある雪の積もりに積もった庭に向いた部屋へやで、寒さのためにみ裂ける恐ろしげな家の柱の音なぞを聞きながら
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかもみはかえって昨日ほどでなく、霜も無いから、身体はむしろ凌ぎよいけれど、仕事は風のためとかく落ちつかない。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
死のような夜更けの酷寒に締めつけられてみ割れる木材の鳴き声が、冷気を伴ってときどきぴゅんぴゅんとかすかに聞こえてくるだけだった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「行っておいで。大人の狐にあったら急いで目をつぶるんだよ。そら僕らはやしてやらうか。堅雪かんこ、み雪しんこ、狐の子ぁ嫁ぃほしいほしい。」
雪渡り (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
水際に沿って細長く張っている白い氷の上に落葉が点々とみついていたが、それが次郎の眼には、さっきから、大きな蛇の背紋のように見えていたのである。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
彼の「み氷りて、静かに美しく」といっている世界は、やはりかかるきびしい精神をいうのであります。
日本の美 (新字新仮名) / 中井正一(著)
または除雪用のコイスキに塗って雪のみ付くを防ぎ、あるいは皮膚の水虫よけに塗ったりしたが、別に食用としては豆腐の製造にこれを利用したそうである。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
雪花をつけてみあがったガラスの面に浮かびあがったのは、まさしく膃肭獣の顔であった。
海豹島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
朝晩のみ方はたいして冬と変わりはない。ぬれた金物がべたべたとのりのように指先に粘りつく事は珍しくない。けれども日が高くなると、さすがにどこか寒さにひびがいる。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
結局彼は学校へ現れたが、もはや一つの電燈が校門に小さく薄暗くみついてゐるばかりであつた。宿直室の外手へ廻つて窓をコツ/\打つてみたが、中に応へる気配がなかつた。
(新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
きかしゃがらあ。だから、ものごとの正直すぎるってえのはきれえなんだ。たまには寒中にほてってみろよ。冬だからたって、なにもこう正直にみなくたっていいじゃねえか。いるんですかい
日あたりに居りていこへど山の上のみいちじるし今はゆきなむ
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
土にみて今朝の落葉はおびただし木履サボオつつかけそこら掃きゐる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
夢なりとみ入る獄の壁に触れ目覚めては得るいのちなりけり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
ひどみるぢやありませんか。」
萬年筆のインクがみた
詩四章 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
「ほんとにみらあ」
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その橇のあとに附いてゆきながら、途中で何度も私は滑りそうになった。それほどもう谷かげの雪はこちこちにみついてしまっていた。……
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その夜もすすをながしたような暗さが、みて石のように固い空模様にまじって、庭は水底の冷えを行きわたらせていた。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「行っておいで。大人の狐にあったら急いで目をつぶるんだよ。そら僕らはやしてやろうか。堅雪かんこ、み雪しんこ、狐の子ぁよめぃほしいほしい。」
雪渡り (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
部屋部屋の柱がみ割れる音を聞きながら高瀬が読書でもする晩には、寒さが彼の骨までもとおった。お島はその側で、肌にあてて、子供を暖めた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今は午前二時半である、大川は一面に氷が張りつめた。氷のみ割れる音がしている。時々発動機船が、ぴしぴしと氷を割り乍らゆるく通って行く。一番鶏が鳴いている、少し風が出た。
日あたりに居りていこへど山の上のみいちじるし今はゆきなむ
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
土にみて今朝の落葉はおびただし木履サボオつつかけそこら掃きゐる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こころいまあたたかかりき人のみなむと云ふ夜を歌詠める身は
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
夕月ゆふづきさしぬ、みぬ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
かれはここの雑木林にさわぐ風や、雪のみる枯草に心をとらわれ、智恵子への夜々の思慕にもえた。六十歳の人間には六十歳の性慾があるものだ。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
娘の初枝が十二の冬、村の小學校への往きがけに、みついた雪の上に誰かに突きころがされたやうにころんで、それがもとで脊髓を患ふやうになつた。
ふるさとびと (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
があ昨夜ゆべな、土ぁ、みだぢゃぃ。」嘉ッコはしめった黒い地面を、ばたばた踏みながらひました。
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
切りりをした障子、古びたふすま、茶色になってへりの擦れている畳や、み割れのあるゆがんだ柱、すすけた行燈の光にうつしだされるあの狭い、貧しい部屋のありさまがまざまざとみえる
日本婦道記:糸車 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
板の間へ掛けた雑巾の跡が直に白く凍る朝なぞはめずらしくない。夜更けて、部屋々々の柱がみ割れる音を聞きながら読書でもしていると、実に寒さが私達の骨まで滲透しみとおるかと思われる……
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
霜のみいたもきびしき土のうへに南天の紅葉はらら散りたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕月さしぬ、野はみぬ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
そうしてまだ雪のみついている、谷までさしかかると、思わずほっとしながら、しかしこん度はこれから自分の小屋までずっと息の切れるような上り道になる。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
があ昨夜ゆべな、土ぁ、みだじゃぃ。」嘉ッコはしめった黒い地面を、ばたばたみながらいました。
十月の末 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それだけにむごい冬の名残りがきびしく、みを耳や足もとに、つたえて来た。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
……来る日も来る日も風だった、筑波おろしという乾いた刺すような木枯しが、遠い野づらをわたり林をゆすり、みた刈田や茶色になった草原をそよがせて、ひょうひょうと家の軒を吹きめぐった。
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのかはり雪の積つた後と来ては、堪へがたいほどのみ方だ。雪のある田畠へ出て見れば、まるで氷の野だ。斯うなると、千曲川も白く凍りつめる。その氷の下を例の水の勢で流れ下る音がする。
路傍の雑草 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
霜のみいたもきびしき土のうへに南天の紅葉はらら散りたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みわるるうだちひびき。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「堅雪かんこ、み雪しんこ、かたいお餅はかったらこ、白いお餅はべったらこ。」
雪渡り (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そのかわり雪の積った後と来ては、堪えがたいほどのみ方だ。雪のある田畠たはたへ出て見れば、まるで氷の野だ。こうなると、千曲川も白く氷りつめる。その氷の下を例の水の勢で流れ下る音がする。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かんとうちて半鐘の音とめにけり火の消え方は夜もみるらむ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「堅雪かんこ、み雪しんこ、かたいお餅はかったらこ、白いお餅はべったらこ。」
雪渡り (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かんとうちて半鐘の音とめにけり火の消え方は夜もみるらむ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)