つね)” の例文
いつもは何より先に薔薇の蕾など数へたまふ間に、我は用意の夕膳端近う据ゆるを四寸は我に譲りて快く箸とり上げたまふがつねなるに。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
かくて我等はくづれおちたる石をわたりてくだれり、石はつねならぬ重荷を負ひ、わが足の下に動くこと屡〻なりき 二八—三〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
時々は母に向ってじかに問いただして見たい気も起ったが、母の顔を見ると急に勇気がくじけてしまうのがつねであった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夕食の支度が出来ますと、私等兄弟三人は、父の書斎へ通ずる廊下の上り段の所から、声を揃へて「パパ カムダウン サパー イズ レディ」と呼ぶのがつねでした。
父八雲を語る (新字新仮名) / 稲垣巌(著)
また昨日きのふ今日けふ新墓しんばか死人しびと墓衣はかぎくるまってかくれてゐよともはッしゃれ。いたばかりでも、つね身毛みのけ彌立よだったが、大事だいじみさをつるためなら、躊躇ちゅうちょせいで敢行してのけう。
狂気ながらも途端場どたんばへ来るとうまくさらりとかい潜るのがつねだった。
其時分のことが簇々むら/\と思ひ出されるのがつねだ。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
れどなほらぬかほ八重やへつねぬことよふてかしてもさそうなと打怨うちゑんずればやうにいそぎなされますなと打笑うちわらひながらきみより御返事おへんじまゐりしなりこれがおうれしからぬことかとさゝやかれてみゝくわつとあつくなりつむねとヾろかれてそでしたしほぐさにはかにはにもらぬを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)