何方いづれ)” の例文
彼はいたへればすべて知らず、町の殷賑にぎはひながりて、何方いづれを指して行かんとも心定らずしばらく立てるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もらうけいつくしみ養育なし廿箇年以前私し方へ連參つれまゐ何方いづれへ成共奉公致させ呉候樣にとの事に付私し世話致しすなはち三河町伊勢屋五兵衞方へ奉公すみ致させ候處一事のあやまりも無奉公を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さりとてれにもしたがひがたきを、なにとしてにとせば松野まつのこゝろまよひもめ、竹村たけむらきみ潔白けつぱくをもあかされん、何方いづれにまれくきひと一人ひとりあらば、くまでむねはなやまじを
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
直ぐにその塲からでも何方いづれかゞこの家を離れゆくと云ふ氣勢けはいをはつきりと見せ得る男であつた。そこには男が特にみのる一人に對して考へてゐる樣な愛なぞは微塵も挾まれなかつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
何方いづれを指さし、何方を振り向く予裕もなくなつて
出発 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
領主 その不埓ふらち爭鬪さうとうはじめた者共ものども何方いづれにをる?
往きにし方は何方いづれぞと
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
こひ一方いつはうつよよく一方いつはうはきものとくはいつはり何方いづれすてられぬ花紅葉はなもみぢいろはなけれど松野まつのこゝあはれなり、りとて竹村たけむらきみさしき姿すがたおもえもしたれ、あさからぬ御志みこゝろざしかたじけなさよ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)