下口おりぐち)” の例文
と少しことばが和らいで来たので、主税はほっ呼吸いきいて、はじめて持扱った三世相を懐中ふところへ始末をすると、壱岐殿坂いきどのざか下口おりぐちで、急な不意打。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腰の蝶番ちょうつがいは満足でも、胸の蝶番が「言ッてしまおうか」「言難いナ」と離れ離れに成ッているから、急には起揚たちあがられぬ……俄に蹶然むっくと起揚ッて梯子段はしごだん下口おりぐちまで参ッたが、不図立止まり
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
僕はまたひげがさ、(水上みなかみさん)て呼ぶから、何だと思って二階からのぞくと、姉様ねえさん突伏つっぷして泣いてるし、髯は壇階子だんばしご下口おりぐち突立つったってて、憤然むっとした顔色かおつき
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでも竹、へい、あのいきがった年増としまの女中でござります。あれは貴女、二階のしち番からおぜんを下げまして、ちょうど表階子おもてばしご下口おりぐちへかかりました処で、ソレ地震でござりましょう。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)