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さんちう
……しかし
無理もない。こんな
事を
言つたのは
恰も
箱根の
山中で、
丁ど
丑三と
言ふ
時刻であつた。
亞尼は、
今は、
眞如の
月影清き、ウルピノ
山中の
草の
庵に、
罪もけがれもなく、
此世を
送つて
居る
事でせうが、あの
惡むべき
息子の
海賊は、
矢張印度洋の
浪を
枕に
幸に
風が
無く、
雪路に
譬ひ
山中でも、
然までには
寒くない、
踏みしめるに
力の
入るだけ、
却つて
汗するばかりであつたが、
裾も
袂も
硬ばるやうに、ぞつと
寒さが
身に
迫ると、
山々の
影がさして