されどもかかる夜中にひとりこの辺にべき道理なければ、必定ひつじょう化物ばけものならんと思い定め、やにわに魚切庖丁うおきりぼうちょうを持ちて後の方より差し通したれば、悲しき声を立てて死したり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)