見るにいつ落せしや九十兩のかね見えざりければ三吉は駭驚仰天びつくりぎやうてんして立歸り猿眼さるまなこに成て能々尋ねけれ共人通ひとゞほり多き所ゆゑ一向に跡形あとかたもなし依て又々元の手ふりとなりければふたゝび本郷の甲州屋へ行仁左衞門に右の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)