くずの衣裳を身に纏い、自然木じねんぼくの杖をつき、長い白髯はくぜんを胸へ垂れた、飄逸洒落ひょういつしゃらくな老人と、その侍童の菊丸とが、富士山麓鍵手ヶ原の、直江蔵人くらんどの古館へ、一夜のやどりを乞うた晩
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)