旦那の牧野まきのは三日にあげず、昼間でも役所の帰り途に、陸軍一等主計りくぐんいっとうしゅけいの軍服を着た、たくましい姿を運んで来た。勿論もちろん日が暮れてから、厩橋うまやばし向うの本宅を抜けて来る事も稀ではなかった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)