いや、まだせないものが、それに添えてある三衣袋えぶくろの中にあった。阿州普化宗院派僧あしゅうふけしゅういんはそうの印可を焼印やきいんした往来手形である。それは、身をつつんでのがれろといわんばかりな品である。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)