こうして、とにかく“婆惜ばしゃく殺し一件”は、鄆城県署うんじょうけんしょのあぶない網の目から、ひろく懸賞金付きで諸州布令ぶれとなり、そして、時の無数な波紋のうちの小波紋として、いつか見送られて過ぎたものだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)