これは早く父允成の愛していた木で、抽斎は居を移すにも、遺愛の御柳だけは常におるしつに近い地にえ替えさせた。おる所を観柳書屋かんりゅうしょおくと名づけた柳字も、楊柳ようりゅうではない、檉柳である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)