空洞カラッポ)” の例文
真昼時まひるどきの、静かな蔭に泌みた部屋に、汚ない服装みなりをした此の婦人が白痴のやうに空洞カラッポな顔をして、グッタリ窓に凭れてゐる様を、私は稀に見ることがあつた。
僕は時々上を見上げて、深くヂッと考へてみる。すると僕の考へが、急に僕の額から煙のやうに逃げ出してゆく、僕は空洞カラッポの額のなかに、憔悴した僕の頬を、そればかり目瞼一杯に映してしまふ。
海の霧 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)