所謂、橙黄橘紅とうくわうきつこうを盛つた窪坏くぼつきや高坏の上に多くのもみ烏帽子やたて烏帽子が、笑声と共に一しきり、波のやうに動いた。中でも、もつとも、大きな声で、機嫌よく、笑つたのは、利仁自身である。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)