木工助もくのすけ)” の例文
『——そこは、男親のつらいお慈悲だ。甘えてはならぬ。また、おれの夜歩きを、わざわざお耳に入れる必要もないぞ。いいか。木工助もくのすけにも、黙っておれよ』
じじというのは、木工助もくのすけ家貞である。父に次いで、清盛がけむたいのは、この忠誠な家来であった。
子飼いからの郎党で、もう髪も白くなりかけている木工助もくのすけ家貞なども、じっとこらえる眼をして、よく、泣きやまぬ子を背に負いながら、出てゆく子の母を見送ることがあった。