明瞭はつき)” の例文
彼がこの青年を明瞭はつきり記憶したのは昨秋の道普請のときであった。そのときの高倉は、あたりの大人なみになりたい一心であった。しかし今では異って見えた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その時こそ覚悟を定める時であつたけれど、尚自らを信じ得ぬ弱さが私を引きずり、現在まで覚悟らしい決意を持ち得なかつた不甲斐なさに責められて、私は今日こそ明瞭はつきり覚悟をする。
孤独のことなど (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
その時私は明瞭はつきりと聴いた。私を蝕む病菌の呼吸の音を。
井の中の正月の感想 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)