が、天皇は、此のおん悲しみに堪へ給うて、皇子手研耳命たきしみみのみことと軍を率ゐて上陸し給ひ、或ひは敵の毒気にあたり給ひ、或ひは熊野の原始林中に迷ひ給ふなどあらゆる辛苦をめさせられたのだ。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)