戛々かつ/\)” の例文
戛々かつ/\と鳴る蹄の音を、私は和やかな自分の鼓動のやうに感じながら、もう殆んど暮れかゝつてゐる野路を駈けてゐた。
鱗雲 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
だが、私が二年程前、彼女とあそこまで初めての探勝を試みた日は、アジロ通ひのガタ馬車が円かなラッパの音を撒きちらしながら戛々かつ/\と走つてゐた麗らかな夏の朝であつた。
環魚洞風景 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
遥かに戛々かつ/\と馬蹄の音がする——庭の行き詰りが石投で降りる土堤どてになつてゐたから下の往来は見降すわけに行かないので彼は、手の平を耳の後ろに翳して街道の騒ぎを窺つた。
村のストア派 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)