懐之くわいし)” の例文
わたくしはかみに柏軒の妻狩谷氏俊が、安政乙卯の地震の時、中橋の家より湯島なる兄懐之くわいしの家へ避難した記を抄し、ちなみに俊が遺文数種の事を言つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
狩谷懐之くわいしの茶番に用ゐた木刀は、髹𩋡きうしつ金環、実に装飾の美を極めたもので、懐之はこれを伊沢氏にあづけて置いた。安石は倉皇これを佩びて馳せ去つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
津軽家用達として世に聞えてゐた湯島の店には、当主懐之くわいしが三十二歳になつてゐた筈である。懐之の妻は所謂呉服屋後藤のむすめで、名をふくと云つたさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)