愍然あわれ)” の例文
これで雨にでも合おうものなら愍然あわれなものだ。二階から下りようと段々の処へ行くと、戸を立て切って上に小さな木札をかけて「林務官御室」としてある。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
しかしながらまた目の前の母が、悔悟の念に攻められ、自ら大罪を犯したと信じて嘆いている愍然あわれさを見ると、僕はどうしても今は民子を泣いては居られない。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
民子の愍然あわれなことはいくら思うても思いきれない。いくら泣いても泣ききれない。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
僕も民さんに逢いたかったもの、民さんだって僕に逢いたかったに違いない。無理無理にいられたとは云え、嫁に往っては僕に合わせる顔がないと思ったに違いない。思えばそれが愍然あわれでならない。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)