恟々びく/\)” の例文
若し夢の中で妻の名でも呼んだら大へんだといふ懸念に襲はれ、その夜からは、寢に就く時は恟々びく/\して手を胸の上に持つて行かないやうに用心した。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
もし伯父に向つて何か言へば、忽ち煙管の雨でも浴せられさうなので、絶えず恟々びく/\しながら伯父の機嫌を窺つて居た。恋しい、険悪な、いつ爆発するかも知れない様な沈黙が幾日も家の中を領した。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)