吉原田圃の全景を眺めるには廓内京町かくないきょうまち一、二丁目の西側、お歯黒溝はぐろどぶに接した娼楼しょうろうの裏窓が最もそのところを得ていた。この眺望は幸にして『今戸心中』の篇中にくわしく描き出されている。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)