天皇の御生涯しょうがいを偲ぶとき、私は一層その感を深くする。小野老朝臣おぬのおゆあそんが「あをによし寧楽ならの都は咲く花のにほふがごとく今盛なり」と詠じたように、天平のみ代はたしかに稀有けうの黄金時代であったろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)