蘿月はもと小石川表町こいしかわおもてまち相模屋さがみやという質屋の後取息子あととりむすこであったが勘当のすえ若隠居の身となった。頑固な父が世を去ってからは妹お豊を妻にした店の番頭が正直に相模屋の商売をつづけていた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)