するとその愛らしき眼、そのはなやかなそで忽然こつぜんと本来の面目を変じて蕭条しょうじょうたる周囲に流れ込んで、境内寂寞けいだいじゃくまくの感を一層深からしめた。天下に墓ほど落ついたものはない。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)