八重かくの如く日ごとわがに来りて夕暮近くなる時は、われと共に連れ立ちて芝口しばぐち哥沢芝加津うたざわしばかつといふ師匠のもとまで端唄はうたならひに行くを常としたり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)