和弦かげん)” の例文
現代人は相生、調和の美しさはもはや眠けを誘うだけであって、相剋そうこく争闘の爆音のほうが古典的和弦かげんなどよりもはるかに快く聞かれるのであろう。
カメラをさげて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうして、めんどうな積分的計算をわれわれの無意識の間に安々と仕上げて、音の成分を認識すると同時に、またそれを総合した和弦かげんや不協和音を一つの全体として認識する。
感覚と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三つの音が協和して一つの和弦かげんを構成するということは、三つの音がそれぞれ互いに著しく異なる特徴をもっている、それをいっしょに相戦わせることによってそこに協和音のシンセシスが生ずる。
「手首」の問題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
こういう見方からすれば、それらの一句中のいくつかの表象はそれぞれ一つずつの音のようなものであって、これが寄り集まって一つの「和弦かげん」のようなものを構成していると見られないことはない。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)